コラム

[2012/07/02] 第48回 古きを知り新しきを生む精神

古い黒電話

1976年から今も続く少女漫画「ガラスの仮面」の中で、“携帯電話”が出現したと聞き驚いた。この作品は長期連載を考え、時代を特定しない風景や服装、小物などに気を配っていると聞いていたからだ。

2009年の朝日新聞のインタビューで、作者である美内すずえさんは「ずいぶん悩んだんです。でも今の時代、描かない方がかえっておかしいと思って」と単行本42巻に携帯電話を登場させた経緯を語っている。

世の中の電話機が黒電話(回転ダイヤル式電話機)からプッシュホン、コードレスホン、携帯電話へと変わりゆく中、この作品の中では黒電話が長年登場していた。連載当時に流行していたゲームやテレビ番組などは登場していないが、電話だけは時代の流れに逆らえなかったようだ。

電話に限らず、新しいものが出てくると今まで使っていたものは古いものとされ、見向きもされなくなる傾向にある。しかし、東日本大震災をきっかけに節電やエコが重視され、見た目や言葉は新しいが古くから使われてきたものが見直されている。

エコシェード(外付けロールスクリーン)やグリーンカーテンなどは、昔からの考え方を今の生活に合わせ、新しく見直した例と考える。

エコシェードは、非常に高い断熱効果があり、昔のすだれをもとに開発されている。

グリーンカーテンは、つる植物を育てることで葉のシェードを作り、直射日光をカットする。植物は、自分の温度が上がらないように、根から吸い上げた水を葉から蒸散させているため、周囲の気温はわずかに下がる。電気やガスなどのエネルギーを使用しないため、節電効果があると考えられ注目されている。

古い技術や考え方を見直すことが、新しいものを生み出すヒントになることもある。
新しいものに対する関心を持ちながら、古い技術や考え方にも目を向ける、古きを知り新しきを生む精神を忘れないようにしたい。<y.c>


コラム一覧はこちら