コラム

[2011/02/07] 第31回 「伝える力」 -わかりやすく伝える文章とは-

手帳とペン

「君の文章は抽象的だね。」小学校高学年のときに担任教師から言われた言葉。抽象的の意味を知らなかった私は、どういう訳か褒められたと勘違いした。後日、褒め言葉でないことを知り、大きなショックを受けた。このことがきっかけとなり、数十年経過した今でも、文章を書くことの苦手意識を克服できていない。

自分の文章の書き方について振り返ってみると、


・思いついたことをそのまま文章にしようとする。
・思いついたことすべてを文章に盛り込もうとする。
・文章を書きながら構成を考えている。
・内容が発散してしまい、途中から何を書きたいのかわからなくなってしまう。

書くべき内容を整理しないまま、いきなり書き出していることに気付いた。話す感覚で書いていたため、論理性に欠ける文章になっていたのである。

そこで、自分の思いが伝わる文章を書くためのヒントを、下部に記載した参考著書よりピックアップしてみた。

相手のことを考えることから始める

文章は基本的に伝わらない。伝わらないのは下手だからではない。伝わらないから、うまく書く必要がある。

「伝えること」と「伝わること」の間には大きな隔たりがある。「気持ち」を伝えるには、そのまま「気持ち」を書いても伝わらない。自分の感想や気持ち、判断や解釈ばかり書くと、読み手の心に届かなくなってしまう。

「気持ちを伝える」とは、相手に、「自分と同じ気持ちになってもらうこと」。そのためには、自分自身が「伝えたい思い」が沸く元となった経験や出来事を文章にする。ひと言で言うと、「事実を書く」ということ。

深く理解していないと、わかりやすく説明できない

自分がそのことを本当によく知っていないと、わかりやすく説明できない。なまじ中途半端に知っていると、「あれも言わなければならない。この要素を落とすと正確ではない」と不安になり、ややこしい説明になってしまいがちである。

出来事の全体像が理解できていれば、それぞれの要素の価値が評価できるので、大胆に切り落とすことも可能になる。何を話すかではなくて、何を割愛するか、ということも大事なこと。全体像が頭に入っているから、落とすべき要素を選択できる。

接続詞は多用せず、短文にまとめる

1つの文に入れる要素は1つに絞り、文を短く切っていく。短い文を畳みかけていくことで、全体像を描いていく。1つの長い文にすると、文章の中身の要素同士が論理的につながっていなくても、まるでつながっているように思えてしまう。長い文を短文に分けていくと、文章が論理的かどうか、はっきりする。長くてわかりにくい文というのは、実は単に論理的でなかっただけ、ということが多い。

接続詞はつけずに短い文を並べたほうが、リズムもいいし、わかりやすい。論理的に流れていれば、接続詞はいらない。逆に言えば、接続詞を多用している文章は、実は論理的でない文を接続詞で無理やりつないでいることが多い。

わかりやすく伝える能力は、現代人にますます問われるようになってきている。文章力を磨くと同時に、次の原則を実践していきたい。「よく理解していれば、わかりやすく説明できる。わかりやすく説明しようと努力すれば、よく理解できる。」  <K.G>

参考著書:
池上彰(2007)『伝える力』PHP研究所
池上彰(2009)『わかりやすく<伝える>技術』講談社
芦永奈雄(2010)『コミュニケーション力を高める文章の技術』フォレスト出版


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