コラム

[2010/06/07] 第23回 不器用を強みに

先日のゴールデンウィークは、自宅でなんとなくと過ごした。唯一の外出と言えば、近所の本屋に行ったことぐらい。その本屋で、私が敬愛する漫画家・浦沢直樹氏の最新コミックを発見し、すぐさま購入した。

浦沢直樹氏の作品には、かならずと言っていい程登場する「長崎尚志」なる人物。日本では数少ないフリーの漫画編集者・漫画原作者・漫画プロデューサーとして活躍する。企画からシナリオ作り、宣伝戦略まで、絵を描く意外の漫画制作すべてに関わる。 浦沢直樹氏とは20年来のつきあいで、全幅の信頼を置かれている。

長崎氏は、自身のことを不器用だという。不器用だからこそ覚悟が必要なのである。

漫画を作る上で大切にしていることは、「自分にはこれしかない」「これでダメなら仕方ない」と思うぐらいまで覚悟すること。「これしかないから、こういう闘い方をしよう」という覚悟を決めて、そこで踏み切るしかないという。


自分の「持っているもの」「持っていないもの」を、事実として真正面から受けとめる姿勢が必要なのである。

自分の持っていないものを、付け焼刃の知識や技術で体裁を整えたとしても、周りには見抜かれるものである。自分の持っている知識や技術を、どうしたら最大限に生かすことができるか自ら考え創意工夫を重ねることが重要なのである。

不器用だからこそ得られるものもある。不器用な人は、ものごとを一つひとつこなしていくしかない。試行錯誤を繰り返し、自分のなかに軸が定まる。軸が定まると、周りも見えるようになり応用が利くようになる。

常に時代の要求に応えるには、器用に振舞うことが大事と思われている。変化が激しく多様化する時代だからこそ、不器用さが大切なのだと思う。

自信とは、現在の自分を肯定する力だという。自分の持っているもので勝負する不器用な人こそ、現代社会に望まれているのではないだろうか。<k.g>


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