コラム

[2009/11/02] 第16回 著作権表示の話

コラムこの記号を見たことはありますか?このサイトの下部分にも記載されていますね。企業のサイトであれば大抵はこの©記号が見られます。私は特に意識をせずに「これは著作権の表示で、これによって著作権が保護されているのだ」と考えていました。しかし最近になってこの著作権の表示について調べる機会があり、その考えは外れてはいないけれども正確では無かったということを知りました。

調べる中で不思議であったことが、様々な企業のサイトや官公庁のサイトでさえも©記号と併記されている言葉がバラバラだということです。“Copyright”という言葉が記載されているサイトもあれば記載されていないサイトもあります。また西暦の表記についても今年である“2009”を記載しているサイトと公開年と思われる年(例えば“2001”)を記載しているサイトがあり、さらには“2001-2009”と記載されているサイトがあるというように統一されていませんでした。「著作権を保護するために記載をするのであれば、何らかの法的な決まりがあり、当然その記載の方法についても厳密に決められているはずではないか」そう考え、©記号を書く理由を調べてみました。

©記号は国家間で締約される万国著作権条約3条1項に基づき記載されるもので、著作権表示のためには“©記号”,“著作権者の氏名”,“最初の発行の年”の3つを記載しなければなりません。記載の順番は定められていませんが、慣習的には“©記号”を最初に書くことが多いようです。さて、この規定には“Copyright”や“改定した年”を記載せよとはありません。では記載することが間違いかというと、そうとも言い切れないのです。

現在©記号を記載する根拠となる万国著作権条約を締約している国家はごく少数(ラオスやカンボジアなど)で、著作権表示をしなくても著作権を保護するというベルヌ条約を採用している国家が大部分だというのです。つまり、世界の大部分では©記号を記載しなければならない法的な決まりは無いということになります。

ではなぜ、法的な決まりが無いにもかかわらず著作権表示をしているのでしょうか。はっきりとした答えがあるわけでは無いのですが、

  • 著作物に対し著作者を明示する。
  • 著作物の利用者が著作権消滅の時期を知ることができる。
  • アメリカ合衆国では著作権表示が無い著作物を、著作権があることを知らずに侵害した場合に法的責任を問われず、それを防ぐために著作権表示をする。

などが主な目的となっているようです。法的に記載が定められていなくても記載することが無駄ではないということですね。

調べ終わってわかったことは、著作権表示は記載の義務があるものではなく、その記載の方法も特に制限は無いということでした。それを踏まえて著作権表示を記載している様々なサイトを見てみると、何を目的としているのかということが見えてくると思います。例えば、著作権表記が無い企業は著作権に対して無関心なのではなく、著作権保護の条約に厳密に従っているのかもしれないとか、“2001-2009”と記載しているサイトは著作権の発生の時期を更新年も含めて主張しているのかもしれないとかですね。当たり前のように記載してあり、あまり意識されることはないかもしれない©記号で始まる著作権表示ですが、これからは少し意識をして見てみようと思います。 <角>


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