コラム

[2009/05/11] 第10回 「働きがい」とは

「働きがい」は個々人の価値観、組織における立場、規模、職種等によって違いが生じてくるものと思います。以下に私の感じるところを書いてみたいと思います。

「働きがい」とは意味合いが異なりますが、まずは「働きたい会社」について。
「働きたい会社」とは単に外側から見たその会社のイメージであり、実際にその会社に入社してみないと本当のところはわからないと思います。この「働きたい会社」という言葉から頭に浮かぶのは毎年リクルートが大学生を対象に実施する就職志望企業ランキングのアンケートです。これは就職前の大学生の企業に対するイメージに過ぎないと思うのですが、そうはいっても順位等、毎年気になります。今年4月8日に発表された2010年春に卒業予定の大学生を対象に調査した結果では1位にJR東海、2位にJR東日本、3位に全日本空輸が入り旅客運輸会社がトップ3となっていました。その一方でトヨタ自動車が前年の6位から96位、ソニーが8位から29位、シャープが14位から55位、キヤノンが20位から77位と業績が悪化している自動車、電機メーカーが大きく順位を下げていました。

昨年から報道されている自動車、電機業界の不振を考えればこの順位変動はある程度想像できますが、興味深かったのは貢献と報酬の関係という部分に対する大学生の意識です。「入社直後の給与は低いが長く働き続けることで後々高い給与をもらえるようになる」という問いに“どちらかといえば”を含めると85%がYESと回答、「評価の良し悪しによって給与があまり変化せず安定的な収入が得られる」という問いには同様に64%がYESと回答し、逆に「評価の良し悪しによって給与が大きく変化することを望む」は7%だけでした。この結果をみて「年功序列」、「終身雇用」といった言葉を思い出しましたが、今の若者たちはそのような意識は薄く評価に応じた正当な報酬を求めているのだろうと考えていたので少々驚きました。時代は変われど「安定した収入」を求めているということなのでしょう。

さて、「働きがい」についてですが、考える上でのポイントはたくさんあります。上司、同僚、部下からの評価(信頼感)、顧客からの評価(顧客満足度の実感)、仕事に対する達成感(会社、プロジェクトへの貢献度)、職場での連帯感、地位(昇格)、報酬、労働条件等々。ポイントはこれ以外にもたくさんあると思いますが、人それぞれ重きを置くポイントは異なると思います。ある書籍によれば「働きがい」とは“働くことに意義を見いだすこと”。私が考える「働きがい」とは単純な言葉でいうと「やり遂げた仕事をお客さんが喜んでくれること」です。それから「職場の仲間から頼りにされること」もそうです。前述の「働きたい会社」の終わりに書いた「安定した収入」も「働きがい」と密接な関係があると思いますが、それだけでは「働きがい」指数は100%に到達しない気がします。

以前、CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)を引き合いに出して、どちらを優先して考えればよいかという記事を目にしたことがあります。たとえば“従業員が生き生きと働かないとお客さまに満足していただけるサービスを提供できない”という考え方はES優先ということになります。当然かもしれませんが、この反対のCS優先があるべき姿ではないかと思います。お客さんから良い評価を受けると、ますますやる気が出てきます。そのやる気によって好結果が生まれ、また良い評価を受けます。多少時間を要するかもしれませんが、これを繰り返していると会社の業績や利益アップにつながり、その結果従業員が「安定した収入」を得ることができるという流れになります。このことからもやはり「やり遂げた仕事をお客さんが喜んでくれること」が自分にとっての「働きがい」なのかなと思っています。

顧客からの評価、社内での評価を計る尺度として人事評価制度を設ける必要があるかもしれません。この制度には高い正当性が求められるので導入は慎重に行なう必要があると思います。今後機会があればこのテーマに関して触れてみたいと思います。 <M.K>


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